自作キーボード入門 a.k.a 買ってよかったキーボード2023
はじめに
この記事は とんえぼ老人部 Advent Calendar 2023 20日目の記事です。
696です。今回は皆さんに"自作キーボード"というものをご説明します。
自作キーボードとは?
自作キーボードとはその名のとおり自作したキーボードのことですが、世の中には大きく分けると二種類の自作キーボードがあります。
- 基板から自作するキーボード
- パッケージ化された自作キットから組み立てるキーボード
今回の記事では後者に当てはまるものの中から実際に買って組み立てたキットを紹介します。
キーボードを自作する意味とは
なんのためにキーボードを自作するかは人によって異なりますが、やはり自分の理想のキーボードを求めるというのが根本的なモチベーションではないでしょうか。
キーボードを自作する際、主にカスタマイズするのは
- キーキャップ
- キースイッチ
- キーマップ
です。
キーキャップはキーボード全体の外見と指に当たる部分の触り心地を、キースイッチは押し込むときの感触とキーの反応速度を、キーマップはタイピング時の効率化を自分の理想に近づけるためにカスタマイズしていきます。
基板から自作するキーボードの場合はキーの物理的な配列を自分好みにすることもできるので、自作キットを超えた先に自分の理想を見出した方々は自前でキーボードを設計しています。
自分好みにカスタマイズしたキーボードは見た目や手触りが非常によく、タイピング時にキーの反応が良好で、効率よく入力することができ、最高です。タイピングという行為の質を極限まで高めてくれます。
実際に自分が買った自作キーボードキット
Quick Paint
まず最初に買ったのは片手デバイスのQuick Paintです。
12個のキーと水平方向に回転するロータリーエンコーダーが使える非常にコンパクトな片手デバイスで、Remapを使うことで自由に入力キーを変えることができます。
キーボードの自作を始めるにあたりまずはミニマルな構成のものから……ということで選んだんですが、個人的にはかなり満足感が高かったです。
通常、自作キーボードというとキースイッチ周りの部品(ダイオードなど)をはんだ付けする必要があるのですが、なんとこのキットではキースイッチとキーキャップを12個用意して本体にはめ込むだけで完成します。
簡単!
キーキャップは無刻印のバラ売りのものを秋葉原の遊舎工房で購入しました。
DSA 無刻印キーキャップ(1個)shop.yushakobo.jp
キースイッチはWuque StudioのWS Morandiを使っています。安価なリニア軸(いわゆる赤軸系)で、非常に滑らかな打鍵感の高品質なスイッチです。
WS Switch Series - WS Morandi 35pcsshop.yushakobo.jp
イラスト制作のスタンダードとなっているCLIP STUDIO PAINT用のショートカットキーがデフォルトでアサインされているのでお絵描きをする人には当然オススメですが、そうでなくとも たとえばCtrlキーを使用するショートカットキーなどをアサインしておいて使うとコピペや全選択などが爆速になり、最強です。
本当に入門用としておすすめの1台です。
Primer16
次にご紹介するのはテンキーのPrimer16です。
こちらはシンプルなテンキーですが、先ほどのQuick Paintと異なり、各種部品のはんだ付けを要求されます。
自作キーボードにおいては基本的にはんだ付けの必要が出てくるので、その練習に最適な1台です。
テンキーとしては通常のキーに加えてオプションでロータリーエンコーダーを付けることもできるのが便利です。
また、キーボードの入力を制御するマイコンを付け替えることでワイヤレス化することもできます。
そのまま組み立てると基板に電子部品の足がむき出しでチクチクするので少し危ないですが、開発・販売を行っている遊舎工房さんでは専用のアクリルケースが別売りされているので、そちらを使用することで安全に使用することができます。
ちなみに私はコナステ版SOUND VOLTEXをプレーする際のプレーオプションの変更にPrimer16を使用しています。このゲームは通常のキーボードについている数字キー(SHIFT同時押しで記号が入力できるほう)ではプレーオプションの変更ができず、"テンキーの"数字キーを入力しなければいけないため、テンキーの付いていないキーボードを使っていた私には非常に重宝しました。まあせいぜい6キーしか使わないんですが。
ちなみにキースイッチはWuque StudioのWS Silent Tactileを選びました。タクタイル軸は内部構造に段差があり、押し始めにカコッと引っかかる感覚(タクタイル感と表現されます)が特徴です。
WS Switch Series - WS Silent Tactile 35pcsshop.yushakobo.jp
WS Silent Tactileはその名の通り静音タクタイル軸というものですが、こちらは打鍵時に衝撃を吸収する部品を内部に追加するのではなくキースイッチの内部構造そのものを通常のタクタイル軸より静かになるように設計してあるらしく、実際わりと激しくタイピングしていても打鍵音は非常に静かです。
その代わり打鍵感は一般的なタクタイル軸と比べるとややスムーズではないかもしれません。少し好みは分かれるところですが個人的には良いスイッチだと思います。
キーキャップはXVXのダブルショット成形のキーキャップを友人から貰っていたため、それを使用しました。少し背が低くて傾斜が付いているので押しやすくて快適です。
XVX 189 XVX Profile Double Shot PBT Keycap Full Setshop.yushakobo.jp
ダブルショット成形というのはキーキャップを二層構造で成形するもので、文字の刻印を印字ではなくキーキャップの成形そのものに組み込んでしまっているため、どんなに打鍵しても文字が擦り切れて見えなくなることがないというのが大きな特徴です。ヘビーユースにも耐えるキーキャップを求めている方はぜひダブルショット成形のものを使いましょう。
Claw44 ver3.1
片手デバイス、テンキーと来て最後はいよいよメインのキーボード。
左右分割型キーボードのClaw44 v3.1です。
左右分割型キーボードというのは文字通り左右にキーボードがパカッと割れているのですが、中でもClaw44は44キーという非常に少ないキー数で構成されているのが特徴です。
自作キーボード界隈においては左右分割型というのは非常にポピュラーで、日本でよく出ている自作キーボードのキットの大半は左右分割型といっても過言ではないくらいです。
なぜそんなに受け入れられているのかというと、通常の一枚板のキーボードでは腕を狭めて縮こまるような体勢でタイピングしなければいけないのに対し、左右にキーボードが割れていることで腕を自然な角度で広げてタイピングすることができるため疲労を感じることなくいくらでもタイピングに専念することができて快適だからです。
また、左右に分かれていることによって真ん中に物をおいたりなど机の上のスペースを有効活用することもできます。
自分の場合は本を見ながらタイピングすることも多いため、真ん中に本を広げてそれを見ながらキーボードを打てる左右分割型キーボードは、もはや生活に必須のアイテムとなってしまいました。
左右分割キーボードの中でも省キー構成のClaw44を選んだのにはいくつか理由があるんですが、ロータリーエンコーダーをオプションで付けられるというところに特に惹かれました。
あと親指周りのキー配列が使ってみると非常によくできていて、自然な指の動きでタイピングできるようになっているのが満足度高いです。
今では2台持っていて、職場にはWS Silent Tactileを使用した静音構成のものを、自宅用では打鍵感をより自分好みにカスタマイズしてロータリーエンコーダーの数を増やしたものをそれぞれ置いて使っています。
もちろん、この記事も自宅用Claw44を使用して書いています。
使用したキーキャップは先ほど紹介したXVXのダブルショット成形キーキャップ(職場用キーボードに使用)とTraitors Aurora Keycap(自宅用キーボードに使用)です。
Traitors AURORA 108 Keycap Setshop.yushakobo.jp
Traitors Aurora Keycapは色味が良くて買ったんですが、実際に使ってみるとサラリとした手触りの質感が非常によく、また打鍵時の音も心地よいものでした。
通常のキーボード用として買うとキーが少ないこと、やや特殊な横幅のキーなどが多いためレイアウトが限られることなどいくつかデメリットがありますが、Claw44はキーが少なすぎてそんなデメリットなど全く関係なかったので、快適に使用できています。
自宅用キーボードに使用したキースイッチはGateron Baby Kangaroo 2.0です。このスイッチ、はっきり言って最高です。打鍵感も打鍵音も求めていた理想のタクタイル軸でした。皆さんも買ってみてください。
マジで世界が変わります。キーボードを使うということがこんなに気持ちの良いことだったなんて思いませんでした。
とにかくいっぱい文字を打ちたいと思わせてくれる魅力を持っているキースイッチです。
Gateron Baby kangaroo 2.0 / Tactileshop.yushakobo.jp
PC用のキーボード周りのデバイスは、Claw44と出会ったことで自分の中では旅の終着点にたどり着いたような気がしています。
そのためしばらくはこのキーボードとともに生きていくつもりですが、もしかするといつかまた、より最高のキーボードを求めて旅立つかもしれません。
しかしその時は、もはや市販の自作キットではなく自分で設計していることでしょう。Claw44の完成度の高さを超えられるかは知りませんが。
そのくらいこのキーボードは良いものだと思います。
おわりに
というわけで、駆け足ではありますが今年買った自作キーボードキットを紹介しながら自作キーボードの世界について触れてみました。
"自作"というとどうしてもハードルが高そうに聞こえますが、実際にはそうではありません。
Quick Paintのようにほぼ出来上がっている状態のものにスイッチとキーキャップをはめ込むだけでも自作といって胸を張って良いのです。
もちろん市販のキットに満足できなくなったら、自分で理想のキーボードを設計してみるのも良いでしょう。
キーボードは究極的には単なる入力用のデバイスでしかありませんが、PCを使う上では最もよく触れるものの一つです。
だからこそ、そこにこだわりたいという気持ちは大事にしていくべきだと思います。
皆さんも自作キーボードで自分の理想のキーボードを追い求めてみてください。それでは。